ここ数年、日本人サーファーによるバリ島での事故が相次いでいる。
それだけ多くの日本サーファーがこの島を訪れているという裏付けでもあるが、明らかに日本の波とバリの波との違いもある。
同じような事故が起きないためにも2017年に入ってから起きた2つの事故を参考にしていただきたい。
1月のバリ島は雨季の真只中である。
その日も雨季の季節風が緩やかに吹き、イーストコーストではサーフィンに理想的なコンディションが整っていた。
前日までのスウェルは徐々に落ち着き始め、アタマ前後の波が綺麗にブレイクしていた。
雨天続きのなか、束の間のよく晴れた朝であった。
Aさんは友人とともにサーフトリップでバリ島を訪れていた。
彼らが入っていったポイントはバリ島の中でも有数のバレルスポットであった。
つまりそれは水深が浅いことを意味しているのだ。
仲間同志で何本かの波に乗っていたところ、浮かんでいるAさんのサーフボードを発見し、異変に気付いた周囲のサーファー達がAさんを浜辺へと運び上げた。
Aさんは後頭部には15cmほどの傷があり、直ちに病院へと搬送されていった。
このときAさんは意識不明の重体だったそうだ。
その後Aさんは奇跡的に回復し、無事日本へ帰国したそうだ。
サーフィンをしている以上、どんなに注意をしていても怪我をしてしまうこともある。
また、注意ばかりしていたらサーフィンにならなくなってしまうだろう。
時として予想もしていなかったワイプアウトをすることもある。
そんな時に運悪くリーフの餌食になってしまったら…
誰にでも起こりうる事故といえるのだ。
もう一つの事故はクタのリーフブレイクで起きてしまった。
その日、乾季の強烈なスウェルがバリ島に押し寄せていた。
アタマ半~ダブル近い波がリーフにヒットして弾けていた。
ボートでポイント間を移動していたロコサーファーがチャンネルに浮かんでいるサーフボードを発見しそれを拾い上げようとしたところ、
年配のサーファーがうつ伏せの状態で海に浮かんでいたという。
慌ててそのサーファーをボートへと引き上げたが、その時にはすでに息はなかったという。
サーフィンは危険を冒しているからこそスリルがある。
快感がある。
充実感や達成感を得ることができる。
これがサーフィンの魅力だ。
しかし紙一重のところで今回ご紹介したような事故があることを我々は知っておく必要がある。
自分の限界を超えた波が目の前に現れた時に『海に入らない』、もしくは『海から上がる』という決断も時には必要だ。
仲間とサーフィンにやってきたシチュエーションでこのような選択をすることは勇気がいる。
チキンだのビビリなどと揶揄されてしまうようなこともなきにしもあらずだ。
しかし、自然と丸裸の状態で対峙することになるサーフィンにおいては自分の身は自分でしか守るしかない。
常に謙虚でなくてはならないのだ。
海で亡くなってしまったサーファーのご冥福をお祈りするとともに、このような事故が再発しないことを祈るのみだ。