「バリ、変わちゃったよね」
そんな言葉を耳にすることが多い。
バリ島サーフィンの創世記を知るベテランサーファーたちは記憶を辿り、青春時代に通いつめた混雑のないサーフスポットが点在していた未開のサーフパラダイスを懐かしむ。
その世界はもうここにはない。
日本も含めどこの世界でも変化は起きている。
特に近年の変化は劇的といってもいい。
しかしその一方、太古の時代から脈々と受け継がれている伝統を今も大切に守っている場所もある。
それがバリ島なのである。
表面的には観光地化が進み、近代化の波が押し寄せている中心部においてもその根本には何ら変わりはない。
何を置いても伝統を一番に守りぬいているのがバリ島の文化なのである。
しかし、ツーリストがこの島の伝統や文化を感じる場面が減っているのも事実である。
それは決して古き良きバリ島が失われてしまったのではなく、近代化の波に覆い隠されてしまっているだけなのである。
一皮むいてみれば、懐かしきバリ島がそのままの姿で残っているのだ。
そんなバリ島の伝統がむき出しのままで受け継がれている場所もある。
中心部から1時間も車を走らせればここかしこに目にすることができる。
さらに奥に進めば、太古のバリ島がそのままの姿で残されている。
バリ島北東部でサーフィンをするついでに、そんなバリの歴史や伝統を感じるタイムトリップに出てみるのも悪くない。
脈々と受け継がれている源流と近代化という本流がどのように混じり合っているのか、肌で感じることができる旅になるだろう。
ジャスリーポイントへ向かう道すがら、荘厳と佇む姿が印象的な寺院。
伝統的な石造りの寺院で、11世紀に建てられたバリ島6大寺院の一つである。
ゴア(洞窟)、ラワ(コウモリ)の名の通り、境内の奥には数千匹のコウモリが暮らす洞窟の存在がある。
洞窟内は聖域として立ち入ることはできないが、入り口にもコウモリの姿を確認することができる。
嘘か誠かわからないが、このゴワ・ラワ寺院の洞窟はそこから20km以上も離れたバリヒンドゥの総本山ブサキ寺院と繋がっていると言われている。
そのことについての逸話は数々残されているそうだ。
このゴワ・ラワ寺院の周辺ではバリヒンドゥの正装をしたバリニーズの姿を見ることができる。
伝統に則り、祭り事を行う彼らの姿は昔ながらのバリ島を想起させてくれる。
境内に入るにはサルン(腰巻)が必要だが、入り口でレンタルできるのでジャスリーでサーフィンした帰りにでも立ち寄ってみてもらいたい。
きっと神聖な気分になるはずだ。
バリ島の食卓を支えるクサンバ村。
昔ながらの製法で塩づくりをする村である。
塩田で作られた塩はミネラル分たっぷりで、甘さすら感じられる優しい味わいだ。
クロトックポイントを過ぎた場所にあるため、サーフィンの後に足を運んでクサンバ村を見学してみてもいい。
また、現在では各地の土産屋でクサンバの塩を購入することができる。
お土産としても喜ばれる一品なので是非お試しいただきたい。
バリ島北東部に残る先住民、『バリ・アガ』の村トゥンガナン。
今も残るバリ・アガの村としては我々ツーリストでも気軽に足を運び入れることのできる貴重な場所である。
塀に囲まれたこの村に入るにはドネーション、つまり寄付金を支払うことが入場料代わりとなる。
彼らはバリ・アガの伝統をそのままの形で残す方法として、村を観光地化し開放することで寄付金を得るという道を選んだのだ。
この村では基本的には格差が存在しないらしい。
彼らは村を一つの家族として捉えているというのだ。
観光で得た寄付金は村の祭りごとの資金として使われ、残ったお金は村人に分配される。
また村で所有している田畑で収穫される米や野菜も村人に分配され、共に分け合いながら暮らしているのだ。
彼らの幸福感に満ちた柔和な表情からも彼らの豊かな生き方を伺い知ることができるはずだ。