bali/columnバリ島・有本圭コラム集

有本圭連載・コラム その1 仕事をすることで浮かび上がってくる『常識』の違い

有本圭連載・コラム「仕事をすることで浮かび上がってくる『常識』の違い 」
  • 『常識』

    バリ島に家族で移住してきて5年の歳月が流れた。 移住当初、まずは3年を目処に計画していたわけなので、思いの他この島に馴染むことができたということなのだろう。
    移住したての頃は違いすぎる文化や習慣に戸惑いを感じることもあった。 良かれと思ってしたことが相手の逆鱗に触れてしまうようなこともあった。 悪気のない言動で相手の心を傷つけてしまい、不審を抱かせてしまったこともあった。 日本の常識などこの島では何の意味もなさないことを痛感させられる日々であった。 ではバリニーズと我々日本人ではどのような違いがあるのだろうか。 これからここに書かれることはあくまでもたった5年間、日本人としてバリ島で暮らしてみて感じた主観的な意見であること念頭に読んでいただけたらと思う。
    我々日本人とバリニーズとでは全く異なる価値観を持っていることは間違いない。 もっともわかりやすい違いは彼らと仕事をしてみるとよくわかる。 これからご紹介する話は知り合いのAさんの身に実際に起きたことだ。

  • 有本圭コラム
  • 仕事をすることで浮かび上がってくる『常識』の違い

    Aさんは日本で輸入業の会社を経営する50代の男性だ。 Aさんはバリから家具を輸入する事業に乗り出し、事前に日本での流通ルートを確保し、予算も組んでバリ島にやってきた。 このビジネスのバリ側のパートナーとなるバリニーズのマデさん(仮名)とは彼の友人を介して知り合い、事前に何度か顔を合わせていた。 マデさんは日本人の奥さんと所帯を持ち、数年間日本で生活した経験もあったため、日本語は堪能でコミュニケーションには何ら支障もなかった。 Aさんはマデさんの助けもありバリ島で数千万円の仕入れや特注を無事済ませて、日本へ帰って行った。
    それから数ヶ月後のこと。
    納期が迫る最中、Aさんは日本からマデさんに生産の状況を確認してみると、約束の出荷日に商品の半分程度しか揃わないことが発覚した。 納期が遅れた原因を問いただすAさんに、生産工場のある村の祭り事が重なってしまったことを説明するマデさん。 納期を遅らせてまで祭り事に参加することなど到底理解できないAさんは激怒してしまった。 何より仕事を最優先に責任を全うしようとする日本のビジネスマンに対して、全く異なる宗教的価値観を持つバリニーズ。 バリニーズの間ではごく普通のことをしたマデさんの言動はAさんの理解をはるかに超えてしまっていた。 残念ながら彼らの取引はこの1度きりで終わってしまったのだった。

  • 仕事をすることで浮かび上がってくる『常識』の違い
  • 2つの大きな違い

    この話には2つの大きなポイントがある。 1つ目はバリニーズの宗教観だ。
    彼らの宗教観は人生観に置き換えられる。 例えばビジネス上のビッグチャンスだからといって宗教儀式をないがしろにするようなことはない。 何を差し置いても信仰を重んじるのが彼らの『常識』だ。 予約を入れていたサーフガイドが突然予約をキャンセルしてお祭り(宗教儀式) に行ってしまうことは日常茶飯事である。 そんな時は代わりのガイドさんがケアしてくれるので問題はないのであるが、彼らの常識を知らない人にとってはずいぶん無責任に感じてしまうかもしれない。
    2つ目は時間に対する意識。 例えば日本では1ヶ月のズレは大きな問題になってしまう。 移りゆく季節に合わせて計画的に物事を進めていかなくてはならないのが日本の常識だ。 それに対して常夏のバリ島においては時間の感覚があやふやだ。 1ヶ月後も3ヶ月後も今日と変わらない夏が続いている。 商品の納入が1ヶ月ズレたところで大きな影響もない。 夏であることには変わらないわけなのであるから。 待ち合わせ時間に現れないサーフガイドの感覚もこれに近い。 いつでもいい波が立つバリにおいて、時間はさほど重要な意味をなさない。 今日も明日も明後日も良い波なのだ。
    しかし、最近では日本人の『常識』を経験で知ったガイドさんが増えているので、時間をきっちり守ることが常識になりつつあるようだ。

  • >2つの大きな違い
  • 違いを認めることが理解を深める

    全く違うモノサシの中で生きてきた人たちと共存していくには、まずは相手を受け入れることから始めなくてはならない。 その上でこちらを理解してもらう努力をすること。 自分たちのモノサシ(常識)を主張しあっていても平行線を辿るだけだ。
    違いを批判せずに、そこから何かを学び取ろうという姿勢さえあれば、彼らの持つ独特の価値観は我々日本人に多くのことを教えてくれることになる。 我々日本人がどこかに置き忘れてしまった大切なことを思い出させてくれるようなことがあるのだ。

    有本圭プロフィール

  • 違いを認めることが理解を深める
 
 
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